つれづれなるままにWINGSFAN
Tribute Vlog for Paul McCartney & Wings
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ポール・マッカートニー&ウイングス
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WINGSFAN をプロデュースしてい
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の中で興味を持ったことやウイン
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情報などを毎日掲載しています。 

wingsfan@wingsfan.net


「レット・イット・ビー」作品解説 その5 リミックス盤の聴き所 Disc 3
レット・イット・ビー スーパー・デラックス・エディション

「レット・イット・ビー」スペシャル・エディションのディスク2はアルバム「レット・イット・ビー」収録曲を元にした選曲になっていたが、今回紹介するディスク3は、その後「アビイ・ロード」に収録されることになる曲やソロ以降に発表された曲など、原則として「レット・イット・ビー」収録曲以外に焦点を当てた構成となった。以下、「ゲット・バック – リハーサル・アンド・アップル・ジャムズ」と付けられたディスク3の聴きどころをトラックごとに紹介する。

オン・ザ・デイ・シフト・ナウ(スピーチ – モノ)/オール・シングス・マスト・パス(リハーサル – モノ)
まず1月2日のセッション開始時、スタジオに到着したジョージとリンゴが新年のあいさつを交わす場面が登場(「レット・イット・ビー...ネイキッド」のボーナス・ディスク〈フライ・オン・ザ・ウォール〉にも収録)。続いて翌3日にジョージが持ち寄った新曲「オール・シングス・マスト・パス」を4人で披露。ジョージの名盤「オール・シングス・マスト・パス」のタイトル曲となったが、ジョンが合いの手を入れる場面などを耳にすると、もし、ビートルズで仕上げていたらどうなっていたかと想像は膨らむ。

コンセントレイト・オン・ザ・サウンド(モノ)
1月6日、ライヴ会場についてやりとりをしている時に、話を向けられたジョンが即興で披露した曲で、ジョンは軽いノリで「大きい会場より小さい会場のほうがいい。サウンドに集中すべきだ」と歌っている。これも〈フライ・オン・ザ・ウォール〉に収録されていた。

ギミ・サム・トゥルース(リハーサル – モノ)
1月7日に「アクロス・ザ・ユニバース」を演奏中にジョンが演奏した曲。ゲット・バック・セッションでは何度か披露され、ジョージもヨーコも気に入っていたが、ジョンは完成していないという理由で、この曲をそれ以上は掘り下げることはなかった。その後、完成形は「イマジン」に収録され、ジョージが、リード・スライド・ギターともいえる印象的なフレーズを弾いている。

アイ・ミー・マイン(リハーサル – モノ)
新曲を書いたと言って1月8日にジョージがリンゴの前で披露したものの、ゲット・バック・セッションではその日にしか演奏されずに終わった曲。「ロックンロール・バンドにこんな曲をやらせるのか」とジョンがこの曲を毛嫌いしていたのが理由のひとつだった。この曲に合わせてジョンがヨーコとワルツを踊った場面は映画「レット・イット・ビー」にも登場したが、取りようによっては“演奏拒否”ともいえそうだ。1970年1月にジョンを除く3人で正式に録音したのは映画「レット・イット・ビー」で使われたからに他ならない。

シー・ケイム・イン・スルー・ザ・バスルーム・ウィンドー(リハーサル)
ここからはアップル・スタジオに場所を移してからの演奏が聴ける。以下4曲は「アビイ・ロード」に収録された曲。ポールが書いた「シー・ケイム・イン・スルー・ザ・バスルーム・ウィンドー」は、ここではブルース色の強い ― つまりはゲット・バック・セッションの主旨に合った、ゆったりとしたアレンジで演奏されている。ジョンの合いの手もいい味わいだ。1月21日収録。

ポリシーン・パン(リハーサル – モノ)
こちらはジョンの曲。ゲット・バック・セッションでは、1月24日に「トゥ・オブ・アス」のセッションの合間にジョンがアコースティック・ギターの弾き語りで一度披露したただけだった。「アビイ・ロード」収録テイクと同じくジョンはリバプール訛りで歌い、ポールが合いの手を入れている。

オクトパス・ガーデン(リハーサル – モノ)
続いてリンゴが書いた曲。1月26日にリンゴがジョージの前でピアノで披露した際にはまだ曲が出来立てで、ジョージが曲の展開を一緒に考えている様子も聴ける。ジョンとヨーコがスタジオにやってきて「何をやればいいか」とリンゴに尋ねて「ドラムを」と言われた時に「ドラムはポールがやりたいんじゃないか」と返す場面も出てくる。

オー!ダーリン(ジャム)
「アビイ・ロード」に収録された4曲目はジョンが自分で歌いたがった1950年代のロッカ・バラード調のポールの曲。この1月27日のテイクは「アンソロジー 3」にも収録されていたが、ジョンのハーモニーや後半のブレイク後のセリフ ― 「僕は今朝、ついに自由になった…」をポールはよほど気に入っていたのだろう。この曲がもし「レット・イット・ビー」に収録されていたら、「シー・ケイム・イン・スルー・ザ・バスルーム・ウィンドー」と同じく、全く別の表情を見せた曲に仕上がっていたのは間違いない。

ゲット・バック(テイク8)
1月27日に集中的に演奏された「ゲット・バック」にはオフィシャル(シングル)・テイクに負けず劣らず力のこもった演奏が多い。このテイク8もしかり。ぱっと聴いただけだとオフィシャル・テイクとの違いはあまりわからないが、特に後半のポールの歌いまわしやアドリブ・ヴォーカルなどが異なるので「なるほど」となる。「ちょっと(テンポが)遅いかも」というジョージ・マーティンの声が最後に入っている。

ザ・ウォーク(ジャム)
1月27日の最後に「アイヴ・ガッタ・フィーリング」を取り上げた際に、合間にポールが歌ったジミー・マクラクランの1958年のヒット曲のカバー。テープが回されていなかったのか、途中からの収録だが、ポール&リンダの「ラム」収録の「3本足」の原曲ともいわれた、緩やかだか真の太いファンキーなブルースが楽しめる。

ウィズアウト・ア・ソング(ジャム)– ビリー・プレストン・ウィズ・ジョン・アンド・リンゴ
ビリー・プレストンの参加がビートルズをいかに活性化させたかは、1月28日に収録されたこのゴスペル調の「ウィズアウト・ア・ソング」のように、ビリーにソロ・ヴォーカルを取らせる場面が多いことでもわかる。1929年にヴィンセント・ユーマンスが書いたスタンダード曲で、ビング・クロスビーやフランク・シナトラのカバーでも知られる。ビリーは1971年のソロ・アルバム「シンプル・ソング」にこの曲を収録した。

サムシング(リハーサル – モノ)
「アビイ・ロード」収録曲の中でも屈指の名曲「サムシング」も1月28日のセッションで初披露された。この時点では歌詞が未完成で、ジョージが「僕を引き寄せるもの」は何かをポールに相談。ジョンが「カリフラワーでもかまわない」といかにもなアイデアを出すやりとりがここで聴ける。ジョンの合いの手がこの曲でもいい味わいである。

レット・イット・ビー(テイク28)
1月31日の最終日に演奏されたテイク。今回テイク28という位置づけになったが、一つ前のテイク27はシングルとアルバムに使われ、テイク28は映画「レット・イット・ビー」に使われた(「レット・イット・ビー...ネイキッド」は両者を使用)。後半の歌詞“There will be an answer”が“There will be no sorrow”と歌われているのは、ポールが最後の最後まで歌詞をどうしようか粘っていたからに違いない。


ディスク3の13曲を通してみてみると、1月2日から31日まで1か月に及ぶゲット・バック・セッションの流れが時系列で収められていることがわかる。

Thanks! ユニバーサル ミュージック

ビートルズ「Let It Be」の心地よいグルーヴ 鳥居真道が徹底考察
レット・イット・ビー

ファンクやソウルのリズムを取り入れたビートに、等身大で耳に引っかかる歌詞を載せて歌う4人組ロックバンド、トリプルファイヤーの音楽ブレインであるギタリスト・鳥居真道による連載「モヤモヤリズム考 − パンツの中の蟻を探して」。今回はロックンロールにおけるリズムパターン、ハーフタイムシャッフルのグルーヴを考察する。

おぎやはぎの矢作兼とアイクぬわらのYouTubeチャンネル 矢作とアイクの英会話 をよく観ています。ある動画で、視聴者から寄せられた「英語の勉強になるような音楽はありますか?」という質問に対しアイクが、ビートルズとカーペンターズと答えていました。なぜか。ゆっくりと歌われるから歌詞が聞き取りやすいからだそうです。これは昔からよく言われていることです。実際、私が中高生の頃に受けた英語の授業でもビートルズやカーペンターズの曲が頻繁に取り上げられていました。たとえば、ビートルズであれば「Ob-La-Di,Ob-La-Da」「Hello Goodbye」「Hey Jude」「Let It Be」、カーペンターズであれば「Top Of TheWorld」「Yesterday Once More」を歌った記憶があります。ビートルズの音楽は日本のテレビ番組やCMで使われることも多く、物心がつく前からそれとは知らずによく耳にしていました。中学生になってロックという文化に興味をもつようになり、モノの本など読んでいるうちに、どうもビートルズは偉大らしいことを知りました。ちょうどその頃、「1」というベスト盤がリリースされるようだったので楽しみ待っていました。遂にビートルズの偉大さに触れられるぞと鼻息を荒くして聴いてみたものの、あまりピンと来ませんでした。その偉大さを実感するようになったのは、気を取り直して各アルバムを一枚一枚聴くようになってからのことです。お茶の間的なビートルズ像を上書きするような役割を「1」は担っていなかったとのだと今にして思います。しかし今改めて「1」を聴くとやはりビートルズは偉大だなと思わざるを得ません。先日、ビートルズの「Let It Be」50周年記念盤がリリースされました。新たなミックスや、「ゲット・バック・セッションズ」のリハーサル音源、お蔵入りとなっていたグリン・ジョンズ・ミックスなどが収録されています。「Let It Be」が発表されたのは1970年5月のこと。諸般の事情により実際の50周年には間に合わず、1年半程度遅れてしまった模様です。アルバム「Let It Be」のタイトル曲である「Let It Be」は学校の授業やテレビを通じて受動的に聴きすぎたために、私の中ではもはや好きとか嫌いとかを超えた地平に存在しています。イントロのピアノやサビでのタイトルの連呼など、かなりキャッチーではありますが、テイストとしてわりと渋めの曲です。とはいえ名曲としての風格は疑いようがありません。「なすがまま」というタイトルには人生の教訓が含まれており、座右の銘にする人も少なくないでしょう。「Let It Be」に関する好き嫌いは判断がつかないものの、この曲のグルーヴは大好物です。いうなれば「マイルドなハーフタイムシャッフル」のことです。ドラムのパターンだけ取り出せば、オーソドックスな8ビートですが、アンサンブル全体を支えているのはハーフタイムシャッフル的なグルーヴに他なりません。このグルーブはイントロのピアノで暗示されています。譜面に起こした場合、それぞれのコードは4分音符で示されるのでしょうが、符点8分音符といったほうがより正確かと思われます。そして、若干ハネているため、実際の音価は付点8分音符よりさらに長くなります。


ハーフタイムシャッフルというグルーヴを一般化したのはバーナード・パーディに他なりません。彼は自らの名前を冠して「パーディ・シャッフル」と呼んでいます。スティーリー・ダンの「Home At Last」でお馴染みのグルーヴです。ところでパーディはヴルフペックの面々とビートルズの「Something」をカバーしていますが、ここでもパーディ・シャッフルが披露されています。もし仮にこれが「Let It Be」だったとしてもパーディ・シャッフルでカバーするのではないかと睨んでいます。パーディ以外のハーフタイムシャッフルの有名な例としては、リッキー・リー・ジョーンズの「Chuck E's In Love」やレッド・ツェッペリンの「Fool In The Rain」、TOTOの「Rossana」がよく挙げられます。ドラマーはそれぞれ、スティーブ・ガッド、ジョン・ボーナム、ジェフ・ポーカロ。これらは1980年前後の音源ですが、こうしたグルーヴの原型は60年代中盤からすでに存在していました。リー・ドーシーの「Get Out of My Life, Woman」はその始祖の一つといって良いでしょう。プロデュースはアラン・トゥーサンで、演奏はのちのミーターズの面々が担当しています。言うまでもなくニューオーリンズ産のグルーヴです。ただしこの曲はそこまでハネているわけではありません。イーブンとシャッフルの中間ぐらいのハネ具合です。この曲の特筆すべき点はロックンロールの黎明期のグルーヴをハーフタイム化したことにあります。ハーフタイムとは歌のテンポは固定したうえで、BPMを半分の数字として解釈するというものです。例えばBPM120の曲を60と解釈して演奏するとハーフタイムになります。そうすることで、4分音符は8分音符となり、8分音符は16分音符となります。リズムの最小単位=サブディビジョンがより細かくなると同時に、演奏には隙間が生まれます。エルヴィス・プレスリーの「Mystery Train」とザ・バンドのカバー版を比べてみるとわかりやすいかもしれません。ロックンロール黎明期のグルーヴは過渡期とでもいうような状況にありました。ちょうどロックンロールのリズムがスイングからイーブンへの移行する時期で、ハネるリズムとハネないリズムの中間のようなリズムで演奏された音源が多いです。ニューオーリンズが生んだ不世出のドラマー、アール・パーマーが参加したファッツ・ドミノの「I'm Walkin'」やサーストン・ハリスの「Little Bitty Pretty One」はやはりマイルドにハネています。この2曲はキックのダブルが耳を引きます。こうしたタイプのビートをハーフタイムに解釈して組み直したものが「Get Out of My Life, Woman」であるというのが私の自説です。90年代初頭のヒップホップで再発見され、重宝されることになる「ドドッ」というダブルのキックは、元を辿ればロックンロールにあるような気がしています。「Get Out of My Life, Woman」のドラムが同時代のロック系ミュージシャンにもたらしたインパクトは大きく、バッファロー・スプリングフィールドの「For What It Worth」やトラフィックの「Deat Mr Fantsy」はその影響下にあるものと言って良いでしょう。


ロックンロールのハーフタイム化は革命的なことでした。60年代中頃のR&Bに見られる傾向だと思いますが、一方にダンス・チューンとしてストレートな8ビートやシャッフルのビートがあり、他方にじっくりと歌を聴かせるスローな6/8拍子(いわゆるハチロク)がある、そんな区分けが見受けられます。その傾向はアレサ・フランクリンの60年代後半のアルバムに顕著です。68年の「Lady Soul」でいえば、8ビート系の「Chains Of Fools」や「Come Back Baby」がダンス・チューン、「(You Make Me Feel Like)A Natural Woman」や「Ain't No Way」が歌ものという区分けになります。ロックンロールのハーフタイム化は、比較的ゆっくりしたテンポの歌ものにおけるアレンジの新たな可能性を拓いたといえます。この発明によりダンサブルでかつ歌が活きるアレンジが可能になりました。その代表例がザ・バンドの「The Weight」です。こちらはハーフタイムシャッフルのリズムとなっております。ロビー・ロバートソン本人がいうように、この曲のイントロのギターはカーティス・メイフィールドのプレイに影響されたことは有名な話です。その頃、カーティス・メイフィールドはインプレッションズの一員として活動していました。「The Weight」におけるインプレッションズの影響はギターだけではないように思います。そのグルーヴも同様に強く影響を受けているように感じています。例えば「People Get Ready」「Falling In Love With You」「Love's A Comin'」「It's All Over」といった曲は、ドラムのビートこそハーフタイムシャッフルではないものの、グルーヴの基盤となるグリッドレベルにおいてはマイルドなハーフタイムシャッフルになっています。「The Weight」が収められたアルバム「Music From Big Pink」には「Tears Of Rage」「In A Station」「I Shall Be Released」などハーフタイムシャッフルに類する曲がたくさんあります。このアルバムを特徴づけるリズムといっても過言ではないでしょう。ちなみに「I Shall Be Released」はニーナ・シモンもカバーしていますが、こちらはハチロクのリズムにアダプトされています。またザ・バンドはサム・クックの名曲「A Change Is Gonna Come」を1973年にカバーしています。原曲はハネたハチロクのリズムですが、ザ・バンドはハーフタイムシャッフルにアダプトしています。ハチロクとハーフタイムシャッフルは互いに乗り入れが可能という関係にあるかもしれません。「Music From Big Pink」は影響力をもったアルバムでした。エリック・クラプトンにクリームを止める決意をさせたアルバムとも言われています。もちろんビートルズのメンバーにも影響を与えており、ジョージ・ハリスンはいたく感銘を受けて、レコードを知人に配るほどの熱の入れようだったようです。リンゴ・スターはのちに「Last Waltz」にかけつけています。ポール・マッカートニーは、「Hey Jude」のプロモーション・フィルムに収められたライブにおいて、曲の終盤で「The Weight」の一節を引用しています。


「Hey Jude」もまた、若干ではありますがマイルドなハーフタイムシャッフルの感覚を湛えたグルーヴの曲です。ただし16分音符レベルでのグリッドがぼんやりしており、ハネてもハネなくても良いどっちつかずな雰囲気があります。途中で挿入されるタンバリンの刻みも中途半端です。「Hey Jude」は北のシュプリームス、南のウィルソン・ピケットによってそれぞれカバーされていますが、前者はイーブン寄りのグルーヴ、後者はシャッフル寄りのグルーヴとなっており、この対比に、原曲のどっちつかずなグルーヴの特性が現れているように思います。「Let It Be」は当初、ハーフタイムシャッフルでの演奏を試みていたようです。ポールがピアノを弾きながら、口で「チッチチッチチッチチッチ」と言いながら、リンゴに対してハイハットのパターンを指定しているリハーサル音源も残っています。この音源を聴く限りでは、リンゴのリズムがシャープすぎてレイドバックしたポールのピアノとマッチしていない感じがあります。このシャッフルのリズムの片鱗は今回リリースされた「Let It Be SPECIAL EDITION (SUPER DELUXE) 」のディスク2の「Let It Be / Please Please Me / Let It Be (Take 10)」で聴くことができます。ジョージがギター・ソロを弾くタイミングでハイハットの刻みがシャッフルになります。しかしシングルやアルバムで使用されたテイクではこの箇所はイーブンの16分音符でハイハットが刻まれています。結局ドラムのパターンにおいてはハーフタイムシャッフルが採用されることはありませんでした。「Let It Be」のドラムにおけるハーフタイムシャッフル要素は2拍目、4拍目の後半に鳴らされるゴースト・ノートに残っています。ビートルズは「Let It Be」のデモをアレサ・フランクリンにカバーしてもらうべく彼女の所属するアトランティックに送ったそうです。実際にマッスル・ショールズの腕利きミュージシャンたちとともにレコーディングしています。これが結果的にビートルズの音源よりも前にリリースされるというオチもついています。ちなみにこちらのカバー版はあまりハネていません。「Let It Be」はビリー・プレストンのオルガンも相まってゴスペルのような雰囲気が漂う曲ですが、カントリー的な響きも感じています。メロディだけを取り出せば、「For Sale」の頃にハーフタイムではないシャッフルのリズムでリンゴがボーカルを取っていてもおかしくおりません。実際ジョン・レノンがリハーサル中にがふざけてカントリーチックなギターの伴奏をつけて「Let It Be」を歌う一幕も音源として残っています。ソウルとカントリーの折衷的な曲想はダン・ペンとスプーナー・オールダム的といえるかもしれません。そういう意味で、アレサにデモ音源を送ったのも頷けます。他にもクラレンス・カーターやグラディス・ナイト&ザ・ピップス、アイク&ティナ・ターナー、レイ・チャールズといったミュージシャンが「Let It Be」をカバーしています。これらのアレンジを聴くと、ポールが想定していたのはこうしたものだったのではないかという想像してしまいます。グルーヴの不一致がバンドに不和をもたらすという説があります。個人的にこの説はなかなか侮れないと思っています。「Let It Be」に関連情報として、映画「ザ・ビートルズ:Get Back」がディズニープラスで11月25日、11月26日、11月27日に配信されます。監督はピーター・ジャクソン。こちら非常に楽しみです。「Let It Be」のアレンジが固まっていく様が見れることを期待しています。

鳥居真道
1987年生まれ。「トリプルファイヤー」のギタリストで、バンドの多くの楽曲で作曲を手がける。バンドでの活動に加え、他アーティストのレコーディングやライブへの参加および楽曲提供、リミックス、選曲/DJ、音楽メディアへの寄稿、トークイベントへの出演も。

Thanks! Rolling Stone Japan

ビートルズ VS ローリング・ストーンズ、あなたはどちらが好き?
レット・イット・ビー

ビートルズとローリング・ストーンズ。ロック史を語るうえで欠かすことのできない2つの超重要バンドの傑作が、未発表音源を含む新装版で蘇った。ビートルズとローリング・ストーンズ。どっちがどのように勝っていて、自分はどっち派なのか。そのような議論や主張にどれだけの意味があるのか今になると疑問だが、過去に友人とそんな話をしたことがあるというひとは少なくないだろう。因みにかつてインタビューが叶った際、キース・リチャーズはこう話していた。「オレもビートルズは好きだよ。ただビートルズはもうないが、ストーンズは今も続いている。その違いは確かにあるよな」。さて、2021年10月、ロック史において一、二を争う重要バンドの傑作が新たな体裁で発売される。ビートルズ「レット・イット・ビー」とローリング・ストーンズ「刺青の男」だ。それぞれ数種のフォーマットでの発売となるが、どちらも未発表音源を多数収録した高価なデラックス版に注目が集まる。「レット・イット・ビー」はビートルズが事実上の解散をした約1ヵ月後、1970年5月に発売された最後のオリジナル・アルバム。映画「レット・イット・ビー」製作と同時進行したレコーディングの膨大な音源をフィル・スペクターがリプロデュースした作品だった。今回の“新たな「レット・イット・ビー」”ではそのオリジナル・ヴァージョンを手本にしたニュー・ステレオ・ミックスを採用。アウトテイクやリハーサル・テイクと合わせて聴けば、50年以上前に4人が描こうとした音世界とメッセージが立体的な像となって立ち現れる。一方、ストーンズの「刺青の男」は1981年8月に発売され、全英2位、全米1位を獲得した名盤。レコードA面に「スタート・ミー・アップ」などロック曲、B面に「友を待つ」などバラード曲をまとめた構成も大胆だった。今回の40周年記念拡張版は、最新リマスターの音のよさはもちろん、当時作られた未発表曲が9トラックも収録されているのが嬉しいところ。この文を書いている10月1週目の段階で既に「リヴィング・イン・ザ・ハート・オブ・ラヴ」とシャイ・ライツのカヴァー「トラブルズ・ア・カミン」が配信されているが、どちらも“これぞストーンズ”といったノリと熱さが味わえる。8月にチャーリー・ワッツが亡くなってしまったが、いくつかの未発表曲の仕上げにはそのチャーリーも参加していたそうだ。現在ストーンズは、スティーヴ・ジョーダンを代役に迎えてアメリカをツアー中。結成時のメンバーはミックとキースだけになったが、バンドはまだパワフルに転がり続けるわけだ。命は、バンドは、永遠じゃない。しかし両バンドの傑作は、今も聴く者を興奮させ、感動させる。永遠があるようにも思えてくる、そんな新装版だ。 (内本順一)

刺青の男

Thanks! ENGINE

「レット・イット・ビー」作品解説 その4 リミックス盤の聴き所 Disc 2
レット・イット・ビー スーパー・デラックス・エディション

1969年1月の“ゲット・バック・セッション”は元々、新曲を完成してライヴでお披露目し、それをテレビ特番として公開する、という目的で開始されたものだった。その1か月間にビートルズの4人は、新曲だけでなく、過去のビートルズ・ナンバーや、ジョンとポールが10代に書いた曲も数多く演奏。それだけでなく、50年代のロックンロールや40年代以前の曲を、セッションの合間に“息抜き”も兼ねて250曲以上演奏した。中には、ほんの一節だけギターで爪弾いたり、鼻歌交じりに歌ったものもたくさん含まれてはいるものの、4人がいかに音楽通であり、興味の幅が最新のヒット曲にまで及んでいたかがわかる貴重なセッションともなった。残された150時間以上の音源を元にアルバム「ゲット・バック」(「レット・イット・ビー」スペシャル・エディションのディスク4に収録)が生み出され、それがビートルズの最後のアルバム「レット・イット・ビー」としてまとめられた。同じく残された57時間に及ぶ映像と150時間以上の音源を元に映画「レット・イット・ビー」(1970年)が制作・公開され、まもなく6時間の大作映画「ザ・ビートルズ:Get Back」が公開されるということになる。レット・イット・ビー」スペシャル・エディションのディスク2と3には“ゲット・バック・セッション”で演奏された音源の中から、珍しいテイクが収められた。いずれも初めて公表されるものばかりだ。今回は、「ゲット・バック - アップル・セッションズ」と付けられたディスク2を、トラックごとに紹介する。ディスク2は、いわばアルバム「レット・イット・ビー」収録曲の“別テイク”が楽しめる曲を収めた構成となった。

モーニング・カメラ(スピーチ - モノ) / トゥ・オブ・アス(テイク4)
まず、1月22日のリンゴのスタジオ到着時の挨拶から始まり、24日に収録された「トゥ・オブ・アス」(テイク4)へ。1月前半のトゥイッケナム・フィルム・スタジオでの演奏では、よりロック色の強い、エレキ主体のテンポの速いアレンジだったが、ここではエレキをやめてアコースティック・ギターに持ち替え、ベースの音はジョージがギターで出すという、フォーク調のアレンジへと変わった。

マギー・メイ / ファンシー・マイ・チャンシズ・ウィズ・ユー(モノ)
「トゥ・オブ・アス」に続けて同じく1月24日に演奏された「マギー・メイ」は、「レット・イット・ビー」収録テイクとは別演奏。こちらのほうが軽めで明るく、粘りっけはない。そのまま同じテンポと雰囲気のまま登場するのは、ジョンとポールが10代の時に書いた未発表曲「ファンシー・マイ・チャンシズ・ウィズ・ユー」。こういう未発表曲がいきなりさりげなく出てくるあたりも、ゲット・バック・セッションの大きな魅力だ。
リバプールの娼婦にまつわる伝承曲「マギー・メイ」と同じくスキッフル調の曲だが、同じタイプの曲(しかも自作曲)を即座に引っ張り出してくるジョンとポールの感覚と相性の良さが現れた曲でもある。ちなみに、“fancy me”と歌っているのに、曲名は“Fancy My”になっている。著作権登録の際にこうしたのかもしれない。

キャン・ユー・ディグ・イット
同じく1月24日の演奏曲。「レット・イット・ビー」に収録された「ディグ・イット」の変奏曲の趣があり、リズム展開が「ディグ・イット」の3拍子から4拍子へと異なり、ファンキーな色合いも増した。そのどちらもジョンのアドリブ・ボーカルが冴えわたる、ゲット・バック・セッションを象徴する1曲とも言えるかもしれない。セッション途中でスライド・ギターに興味を覚えたジョンが、やたらと使用し始めた時に生まれた曲でもある。エンディングには「レット・イット・ビー」収録の「ディグ・イット」のエンディングにフィル・スペクターが「レット・イット・ビー」の“曲紹介”として挟み込んだ“That was‘Can You Dig It'...”のフレーズがジョンの口から飛び出す。

アイ・ドント・ノウ・ホワイ・アイム・モーニング(スピーチ - モノ)
“ゲット・バック・セッション”のプロジェクトがポールの望んだ「彼の曲」ではなく「みんなの曲」になったことや、これまでは無計画だったからうまくいっていたことをジョンとジョージがそれぞれ語るなど、具体的に話が進まない状況について“真面目なやりとり”を交わす4人の様子をとらえた1月25日の会話を収録。

フォー・ユー・ブルー(テイク4)(ゲット・バック - アップル・セッションズ)
「フォー・ユー・ブルー」は、1月25日に収録されたこのテイク4も、他のどのテイクも、アレンジ自体には大きな変化はない。ポールのピアノの音色とジョンのスティール・ギターの音色が曲の良いアクセントになっている。むしろ、ジョンとポールをやる気にさせたジョージの曲、という点が重要だ。

レット・イット・ビー / プリーズ・プリーズ・ミー / レット・イット・ビー(テイク10)
1月25日に収録された「レット・イット・ビー」は、まだ緩やかな演奏。冒頭で曲の全体の構成をジョージがポールに尋ねたのに続き、ポールがピアノでアドリブで「プリーズ・プリーズ・ミー」を披露。初期のレノン=マッカートニーのヒット曲が適度に挟まるのが面白くもあるが、「シー・ラヴズ・ユー」と「抱きしめたい」はなぜか65年以降、登場する機会が(ポールのソロ・ライヴも含めて)まったくといってほどない。続いてポールが26日に今度はきちんと「レット・イット・ビー」を披露するが、すでにアレンジもテンポも含めてわりと作りこまれているのがわかる。ビリー・プレストンのオルガンのソフトな音色が新鮮だ。「レット・イット・ビー」には、間奏のジョージのギターがどんなフレーズを弾くのか、その違いを聴く楽しみもある。

アイヴ・ガッタ・フィーリング(テイク10)
この曲のように、エレキ・ギター主体のハードなロック・ナンバーはライヴ(生収録)映えすることがわかる。ただし、1月30日の屋上での演奏が完璧なので、アップル・スタジオでのテイクは、屋上での“本番”に向けての過程を収めた演奏のように結果的に思えてしまうのもたしか。逆に言えば、屋上でよくあそこまでの熱演ができたと思う。1月27日の演奏。

ディグ・ア・ポニー(テイク14)
1月28日に収録された「ディグ・ア・ポニー」も、「アイヴ・ガッタ・フィーリング」と同じく1月30日の屋上での演奏が抜群だが、ここでは、トゥイッケナム・フィルム・スタジオでは手こずっていたアレンジもすっかり解消され、バンドとしてのまとまりの良いサウンドへと変貌している。この曲や「ドント・レット・ミー・ダウン」は、ジョンのボーカルがどこまで力強く響きわたるかが要である、ということがわかる。

ゲット・バック(テイク19)
1月28日に演奏された「ゲット・バック」のテイク19は、(他と同じように)ジョージのカウントで始まる。前の2曲に比べると、1月27日と28日にセッションで取り上げられた「ゲット・バック」は、完奏されていないものも含めて、力のこもったテイクが多い。セッション自体のテーマ曲的存在になったということもあり、4人が最も乗りやすく、手ごたえを感じていた1曲だったのだと思う。そしてこのテイクでは、エンディングのブレイク後の演奏も素晴らしく、グリン・ジョンズはその箇所を27日の演奏別テイクと編集で合わせてシングル・ヴァージョンの元とした。もちろんここでは映画「レット・イット・ビー」のエンディングに登場する演奏以上にポールのアドリブ・ボーカルが楽しめる。

ライク・メイキング・アン・アルバム(スピーチ)
アップル・ビル屋上でのライヴの日が迫ってきた1月28日の会話を収録。「今週の木曜日(30日)に半分レコーディングし、残りの半分は映画用に同じ場所でやるか?」とジョンが他の3人に提案したりしている。

ワン・アフター・909(テイク3)
「ワン・アフター・909」も屋上で披露された素晴らしいテイクがあるが、その前日の1月29日に収録されたこのテイク3も、屋上での演奏に匹敵するグルーヴ感ある見事な仕上がりとなっている。エレピではなくピアノを弾くビリー・プレストンのノリを含め、シャッフル感のあるややゆったりした演奏が刺激的だ。

ドント・レット・ミー・ダウン(ファースト・ルーフトップ・パフォーマンス)
1月30日に屋上で披露された最初の「ドント・レット・ミー・ダウン」を収録。3番の歌詞を思いっきり間違えたジョンらしい(?)テイクでもあるが、全体的に、本気を出した時のジョンのボーカルの凄さを堪能できる最高のテイクだ。オフィシャルにはないジョージのハーモニー・ボーカルがいい味。

ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード(テイク19)
“ゲット・バック・セッション”の最終日となった1月31日に収録された、屋上向きではない3曲のうちのひとつ。このテイク19は、映画「レット・イット・ビー」にも登場するポールのイメージ通りの演奏で、間奏のポールのハミングに思わずぞくっとさせられる。これを聴くと、「ゲット・バック」や「レット・イット・ビー」にはこのテイクを選んでもよかったのではないかと思う。

ウェイク・アップ・リトル・スージー / アイ・ミー・マイン(テイク11)
最後は、ついに登場した70年1月3日収録の“スリートルズ”(ジョージ、ポール、リンゴ)による「アイ・ミー・マイン」の別テイク(テイク11)。エヴァリー・ブラザーズの「ウェイク・アップ・リトル・スージー」のさわりをポールが披露したのに続き、ほぼインストでの収録となったが、ジョンの脱退宣言後にスタジオに顔を揃えた3人の和気藹々とした雰囲気が感じ取れる。特に、リンゴのドラムのうまさに耳を奪われる。曲の終了後にテイク15開始前のジョージのコメントが追加されている。この部分は「アンソロジー3」にも収録されていたが、ジョージの発言に思わず笑い声をあげるリンゴとポールに続いて、「ドジーに賛同だ」というポールの声も聞き取れる。


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「レット・イット・ビー」作品解説 その3 リミックス盤の聴き所 Disc 1
レット・イット・ビー スーパー・デラックス・エディション

「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」「ザ・ビートルズ」「アビイ・ロード」と2017年から2019年にかけて発売されたビートルズの“発売50周年記念シリーズ”。その流れを受け、世界的パンデミックの影響で1年遅れで登場したのが「レット・イット・ビー」のスペシャル・エディションだった。下記6形態での発売となった。

① スペシャル・エディション スーパー・デラックス(5CD + 1ブルーレイ収録)
② スペシャル・エディション 2CDデラックス
③ スペシャル・エディション 1CD
④ スペシャル・エディション LPスーパー・デラックス/直輸入仕様/完全生産限定盤
⑤ スペシャル・エディション 1LP/直輸入仕様/完全生産限定盤
⑥ スペシャル・エディション 1LPピクチャー・ディスク/直輸入仕様/完全生産限定盤=THE BEATLES STORE JAPAN限定商品

記念盤が発売されるたびにファン(マニア)が大きな関心を寄せるのは「どんなふうに音が変わっているのか?」と「どんな未発表音源が入っているのか?」だろう。アルバム「レット・イット・ビー」はプロデューサーのジャイルズ・マーティン(ビートルズのプロデューサー、ジョージ・マーティンの息子)とエンジニアのサム・オケルが“ステレオ、5.1サラウンドDTS、Dolby Atmos”で新たにミックス作業を行なった(クレジットはプロデュースとミックスがジャイルズで、サムがエンジニアとミックス)。ただし、今回の“ニュー・ミックス”に関しては、以前とは状況が違う。ジョージ・マーティンではなく、フィル・スペクターが「リプロデュース」したアルバムに、ジャイルズとサムが手を付けることになったからだ。ジャイルズは、今回の作業に向かう姿勢について、スペシャル・エディションのライナーでこんな風に語っている。「議論を呼んだプロデューサー、フィル・スペクターの起用は、それ以前のビートルズとはまったく異なるサウンドのアルバムを生み出す結果となりました。たしかに彼のアプローチは、わたしの父が他のアルバムに施したアレンジの繊細さを欠いていたかもしれません。それでも彼は時代を超えた独自のサウンドをつくり出していますし、それはこの新しいミックスでも、尊重しなければなりませんでした」。では、ジャイルズとサムの二人は「レット・イット・ビー」をどんなふうに生まれ変わらせたのか。①のスペシャル・エディションの聴きどころを、今回から紹介していくことにする。まずはディスク1の「レット・イット・ビー」ニュー・ステレオ・ミックスから。全体的に言えるのはボーカルが前面に出て耳に届きやすくなったことと、それぞれの楽器が独立して聞こえるような ― つまりは4人(+ビリー・プレストン)の存在感が増した、ということだ。以下、収録曲ごとに際立った点についてまとめてみる。

トゥ・オブ・アス / Two Of Us
一緒に歌うジョンとポールの“声の調和”が明快になり、特にジョンのボーカルがより分離した印象となった。ポールのギターのストロークは指の動きがみえるほどだし、リンゴのバスドラムのキックも足を踏みしめている様子が伝わるほど明瞭である。

ディグ・ア・ポニー / Dig A Pony
特にこの曲のニュー・ミックスに関しては「レット・イット・ビー...ネイキッド」と比べると違いがわかりやすい。ジョンとジョージによるエレキ・ギターが「ネイキッド」では音圧高めの轟音で、とんがった響きになっていた。だが今回は、ギターは抑え目でバンド・サウンドを重視した5人による音の調和が楽しめる仕上がりである。フィル・スペクターが最初と最後のボーカルをカットしたが、今回はその繋ぎが以前よりもわかりやすくなった。

アクロス・ザ・ユニバース / Across The Universe
収録曲の中で最も変貌の激しい1曲。ジョンのアコースティック・ギターが艶やかな響きとなり、ボーカルも、エコー感を含めてより幻想的に伝わってくる。何よりストリングスが全体を包みこむように全体的に広がったことで、曲の印象が大きく変わった。

アイ・ミー・マイン / I Me Mine
イントロのアコースティック・ギターとエレキ・ギターが左右に分離したことで、音の塊として迫ってくる従来のヘヴィ・ロック調のサウンドが和らいだ印象となった。フィル・スペクターによるストリングスも同じく分離度が増し、「アクロス・ザ・ユニバース」と同じく“ウォール・オブ・サウンド”を特長とする“スペクター色”が薄まっている。

ディグ・イット / Dig It
大きな違いは感じないものの、やはりジョンのボーカルも各楽器も開放感のある音になった。

レット・イット・ビー / Let It Be
「トゥ・オブ・アス」などと同じように、出だしの一音(ここではピアノ)からまっすぐ耳に届くようになり、ポールのボーカルもこれまで以上に強く、大きくなった印象である。ジョージ・マーティンが手掛けたストリングスやブラスも、さらに味わいが増した。

マギー・メイ / Maggie Mae
この曲は「トゥ・オブ・アス」のジョンとポールのボーカルと同じく、二人の立ち位置が見えるようで、二人で風変わりな声を出す面白さがより伝わる仕上がりとなった。

アイヴ・ガッタ・フィーリング / I've Got A Feeling
アップル・ビルの屋上でのライヴ音源に関しては、これも「ディグ・ア・ポ二ー」と同じく“重厚から明瞭へ”といった音の変化があり、ギターは抑え目になった。リンゴのドラムとビリー・プレストンのエレキ・ピアノが前面に出て、ポールのベースはやや引っ込んだ印象だ。

ワン・アフター・909 / One After 909
この曲も屋上でのライヴ音源。同じくバンド・サウンドが強調され、臨場感たっぷりのサウンドが楽しめる。

ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード / The Long And Winding Road
フィル・スペクターの仰々しいストリングスや女性コーラスが控えめになり、「レット・イット・ビー」と同じくポールのピアノがよりクリアになった。リンゴのドラムも煌めくような音色で、ポールが嫌う壮大な雰囲気が大幅に減少。エンディングのハープはポールの希望でジャイルズは小さめにミックスしたと語っている。

フォー・ユー・ブルー / For You Blue
メリハリの利いたサウンドへと変貌し、特にポールのピアノも弦の張った音がくっきりとなった。冒頭のジョンのセリフからして、従来よりも大きめに聞こえる。

ゲット・バック / Get Back
重厚さは変わらず、特にポールのボーカルやジョンとジョージのギターがクリアな音へと変化した。

こうしてみてみると今回のニュー・ミックスは、フィル・スペクターがストリングスなどを加えた「アクロス・ザ・ユニバース」「アイ・ミー・マイン」「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」の3曲の、より曲に溶け込んだサウンドの変化と、アップル・ビル屋上で演奏された「ディグ・ア・ポニー」「アイヴ・ガッタ・フィーリング」「ワン・アフター・909」の3曲のバンド感の増大、という2点が際立った特徴と言えるかもしれない。


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年内 マル・エヴァンス伝記本

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3/31 10:55~11:00 らじるの時間 NHK-FM
3/31 10:55~11:00 らじるの時間 NHKラジオ第1
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4/14 10:00 ディスカバー・ビートルズⅡ NHK-FM

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3/31 ビートルズ 1964・US・ファースト・アタック
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3/31 ゲイリー・ムーア スティル・ゴット・ザ・ブルーズ (ジョージ・ハリスン参加)
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4/21 イアン・ハンター Defiance Part 1 (リンゴ・スター参加)
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4/21 エミット・ローズ Emitt Rhodes Recordings 1969-1973
4/22 リンゴ・スター Stop and Smell The Roses
4/26 マイク・ヴァイオラ ポール・マッカーシー
4/28 ジョージ・マーティン ビートル・ガール 1964-1966
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5/26 ポール・マッカートニー Live On Air / Radio Broadcast Recordings 1990 / 1993
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年内 ヨーコ・オノ シーズン・オブ・グラス
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8月 BE@RBRICK The Beatles "REVOLVER"

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4/1 ビートルズのチカラ! 東京・中目黒
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4/15 14:00 AUTOMOBILE COUNCIL 2023 60年代はクルマと音楽の黄金時代~ブレッド&バター
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5/13 13:00 アラウンド・ザ・ビートルズ2023 いま改めてビートルズの魅力を再検証
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映画
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