つれづれなるままにWINGSFAN
Tribute Vlog for Paul McCartney & Wings
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ルーフトップ・コンサート完全解説 独創的で伝説的なパフォーマンスの全貌
Get Back (The Rooftop Performance) - The Beatles

約53年の歳月を経て、2022年1月28日、ビートルズの最後のパフォーマンスが「Get Back (The Rooftop Performance)」として音楽ストリーミングで配信された。あの屋上で演奏された全10曲をほぼ完全な形で聴くことができるようになったのだ。1969年1月30日に行われた驚くべき出来事を撮影したものは、ピーター・ジャクソン監督によるドキュメンタリー映画「ビートルズ:Get Back」のクライマックスにもなっている。しかし映画内では、地上で繰り広げられるドラマを魅力的に伝えるため、屋上の音楽が常に前面に出ているわけではない。ジャイルズ・マーティンとサム・オケルによる新しいミックスは、屋上でのセッションを収録した2巻のテープからほぼすべてが収められている。この歴史的な音源を聴くことは、スリリングな体験だ。当時は誰も予期していなかったが、これがビートルズの最後のライブとなった。このコンサートは斬新で、ユーモラスで、前代未聞で、ビートルズを永遠たらしめる要素を集約したものであり、バンドによる最後のライヴを飾るにふさわしいものとなった。

屋上ライヴを行うことになるまで
英ロンドンのサヴィル・ロウ3番地にあるアップル社の屋上でバンドが演奏することになったのは、1968年10月に発売されたアルバム「The Beatles」が完成した直後、ポール・マッカートニーがあるアイデアを提案していたからだ。ポールはこう振り返る。「僕自身がバンドの大ファンで、今まで一緒にやってきたことが大好きだった。だからいつも一緒にいようとしていたし、何かできないかって考えていたんだ」。1969年1月2日、ビートルズは野心的な新プロジェクトの核となる3つのアイデアを持って、ロンドン南西部にあるトゥイッケナム・フィルム・スタジオに集まった。1966年8月の全米ツアー以来、ライヴを行っていなかったビートルズが、再びステージに立ち、テレビで生中継されるコンサートをすることが1つ目の目的だった。2つ目のアイデアは、テレビ特番のためのリハーサルをすべて撮影することだった。ポールがドキュメンタリーのコンセプトを説明しているところをカメラが盗み聞きしていると、ジョージ・ハリスンが「これは本当に映画を作っているの?」と疑問を投げかけ、ポールが「ああ、ピカソの絵のようなものだよ。何もないところから始めて、最終的にはテレビ番組になるんだ」と説明している。そして3つ目のアイデアとは、それまで観客が聞いたことのない曲を、わずか2週間半の間に作り、演奏することであった。リハーサルの最中、ジョージがトゥイッケナム・フィルム・スタジオから離れ、そしてビートルズからも脱退してしまうような緊迫した場面もあった。この危機は、居心地の良いアップル・スタジオに移動し、テレビ番組の生中継やコンサートのための海外旅行などの贅沢な計画を中止することで解決した。その贅沢で奇抜な計画はいくつかあったが、その中の一つには、クイーン・エリザベス2のような豪華客船を2隻ほど借りて、ビートルズと観客をアラブの砂漠に連れて行き、たいまつを灯してコンサートをするというものもあった。ジョージは、1969年1月25日に撮影クルーが録音したディスカッションの中でこう語っている。「今までの僕らにとって最高にうまくいったことっていうのは、今回のように計画されたものじゃない。ただ、何かに向かっていけば、それ自体がうまくいく。それが何であれ、うまくいくんだよ」。そして、最終的にはジョージの言う通りになった。アップル社のオフィスビルの最上階に行き、ロンドンの景色を一望したことがきっかけで新曲のいくつかを屋上で演奏するという斬新なアイデアが生まれた。リンゴ・スターはこう振り返る。「あれこそがビートルズらしいやり方だよ。最終的には、“じゃあ、屋上に機材を置いて、やっちゃおうぜ!”ってなったんだよ」。当時撮影を担当していた監督のマイケル・リンゼイ=ホッグは、映画の締めくくりにコンサートを行う可能性があることに安堵していた。「映画を見ている観客のことを考えると、バンドがトゥイッケナムからアップルに移動して、そのハードワークの結果や何が起こっているかを示せるような、ある種の成長や成果が描かれていなければなりません。何らかの解決策があることを強く望んでいたんです」。コンサートの前日、ジョージは「屋上には行きたくない」と言っていた。決められた時間に集まって屋上への階段を上っても、4人がその気になるかどうかは直前まで微妙なところだった。

屋上コンサートの全貌
1969年1月30日12時30分、屋上に現れたビートルズは、準備時間は僅かだったがカメラやスタッフを増員してステージを作るための入念な準備をしており、誰もが安心していた。テープの冒頭で「ロール・カメラ、テイク・ワン」という掛け声が聞こえた後に、リンゴがドラムキットの位置を迷っている様子や、ポールが飛び跳ねて下に敷いた木の強度を確かめている音が収録されている。エンジニアのグリン・ジョンズとプロデューサーのジョージ・マーティンが、ビルの地下にあるコントロール・ルームでサウンド・レベルを設定するために、ビートルズが「Get Back」を演奏している時に、録音は一旦停止した。その後、録音が再開され、テープボックスにはリハーサルと書かれた「Get Back」の最初の全演奏が収録された。屋上にはほとんど人がいなかったので、曲の終わりの静かな拍手は、クリケットの試合で聞こえる丁寧な拍手のようにポールには感じられたため「(クリケット選手の)テッド・デクスターがもう1点取ったようだね」と、上品な解説者を冗談交じりで真似てみせた。ジョン・レノンは、昼間の時間に演奏していると、バンドが有名になる前に、リヴァプールのキャヴァーン・クラブでランチタイム・セッションを何度も行っていたことを思い出したようだ。当時のビートルズは、お昼の休憩時間にキャバーンでお昼ご飯を食べている観客から演奏曲のリクエストをされることが多かったのだ。マイケル・リンゼイ=ホッグがグリン・ジョンズに録音を止めるように言う前に、「マーティンとルーサーからのリクエストを頂きました」とジョンが冗談を言ったのはそのためだ。「Get Back」の2回目の演奏の後でもジョンは「デイジー、モリス、トミーからリクエストを頂きました」と言っている。ルーフトップ・コンサートには、ビートルズがデビュー前の修業時代にドイツ・ハンブルグにあった治安の悪いクラブで演奏していた頃に出会った友人、ビリー・プレストンがバンドに加わっていた。1962年、当時10代だったキーボード奏者のビリー・プレストンは、ロックンロールのパイオニアであるリトル・リチャードとともに西ドイツの港にやってきていたのだ。1969年1月、BBCのテレビ特番に出演するためにロンドンに来ていたビリーは、すぐにアップルから演奏をするように依頼されることになった。「もともとは、バンドに挨拶をするためにちょっと寄ろうとしただけだったんだよね。バンドとジャムを始めたら、アルバムを仕上げているから泊まっていって制作を手伝ってくれと言われたんだ。そして私をバンドの一員として扱ってくれた。それはもう最高でしたよ」。「Don't Let Me Down」は、ルーフトップ・コンサートで2回演奏された。1回目の演奏ではジョンが2番の歌詞を忘れてしまい、「And all is real, she got bleed blue jay gold」と意味のない単語の羅列になっている。ドキュメンタリー「ビートルズ:Get Back」では、アップル社のコントロール・ルームで撮影した映像を確認する様子が撮影されているが、この無意味なセリフを聞いたジョンは、カメラを真っ直ぐに見つめ、眉をひそめていた。この日には「Don't Let Me Down」がもう一度演奏されたが、その時には、冒頭の歌詞を間違えている。1970年5月に発売されたアルバム「Let It Be」には、屋上で演奏された「I've Got A Feeling (Take 1)」「One After 909」「Dig A Pony」が収録されている。「Dig A Pony」を演奏するにあたり、ジョンは歌詞を覚えてなかったためカンペを見ながら演奏する必要があった。そこで、アシスタントのケビン・ハリントンが、膝をついて歌詞カードを掲げて譜面台代わりになり、ポールは演奏前に「長い曲だから楽にしてね」と言っている。ちなみにアルバム「Let It Be」に収録された「Dig A Pony」には、ルーフトップで演奏された際に最初と最後に歌われていた「All I want is you」のリフレインが編集でカットされている。


1リール目の録音を止める直前、「Dig A Pony」の最後で「コードを弾くには手が冷たすぎるよ」とジョンが言っているのが聞こえる。気温は7度、屋上には冷たい風が吹きこんでいた。この寒い中での演奏を考えると、ビートルズの演奏の器用さには驚かされるばかりだ。また、録音の音質も素晴らしい。今回配信された「Get Back (The Rooftop Performance)」のために新たなミックスを担当したジャイルズ・マーティンは、当時の音源についてこう言う。「グリン・ジョンズの素晴らしさがよくわかります。今の時代、もし屋上で演奏しようとしたら、1969年に録音されたものほど良いものにはできないと思います。屋上で行っていた演奏を聴いていることを忘れてはいけません。(残されている音源には)マイクに風切り音があまり入っていません。そしてヴォーカルとギターの音が際立っているんです」。新ミックス「Get Back (The Rooftop Performance)」の音源では、左にジョンのギター、右にジョージのギター、左にビリーのエレキピアノ、中央にドラム、ベース、ヴォーカルが配置されている。2本目のテープには、英国国歌「God Save The Queen」をビートルズが即興で演奏するジャムの一部が録音されていた。続いて「I've Got A Feeling」と「Don't Let Me Down」の2テイク目が収録。この日の最後に演奏された曲は3度目となった「Get Back」だ。警察官が屋上に到着して並んでいた時に演奏されたこのバージョンでは、1番の途中でギターアンプのスイッチが切られたが、ジョージが反抗的にスイッチを入れ直した(編註:楽曲開始40秒ごろから)。また、ポールは「Get Back」の最後に「ロレッタ、君は外に長くいすぎたね。また屋根の上で遊んでるけど、これは良くないよ、ママがこれを好きじゃないって知ってるだろ。君のママは怒ってるから、ママに逮捕されちゃうよ!」と即興で歌っている(編註:ロレッタは「Get Back」の中に登場している人物。具体的に誰のことかはポールは明らかにしていない)。街中で起きている騒音や騒動に対する苦情は、屋上にも伝わっていた。ポールはこう振り返っている。「映画の最後を飾るにはこれしかないって突然思いついたんだ。みんなが警察に捕まって、刑務所に連れて行かれるんだ」。リンゴもポールの意見に同意している。「あの時はこう思っていたよ「そうだ、俺たちは撮影中だった。ドラムから引きずり降ろしてくれ」ってね。そうなったら良かったんだけどね。でも、「あの、音を小さくしてくれますか」と言われただけったんだ」。彼らの思い付きの通りにはならなかったが、屋上に来訪した警察官が足止めされたことで、すべてがうまくまとまった。バンドが屋上を去る前、ジョンはグループの初期の頃を思い出してこう言った。「グループを代表してお礼を申し上げたいと思います。私たちがオーディションに合格していることを願っています」る

その反応
実際のところ、平日のお昼時、予告なしに行われた屋上ライヴは万人に歓迎されたわけではなく、マスコミでの報道も驚くほど少なかった。ロンドンの新聞イブニング・スタンダードは「警察がビートルズの”騒音”を止めた」という見出しで、次のように報じていた。「アップル社の隣の会社の役員、スタンレー・デイビス氏は「この血生臭い騒音を止めて欲しい。あんな行為は恥ずかしすぎるだろ」と話していた」。また、近くの銀行の従業員はこの出来事について同紙に「バルコニーや屋上にいる人たちは皆、セッションを楽しんでいるようでしたよ。中には良い音楽を認めない人もいますけどね」と語っていた。NME では「アレン・クライン、ビートルズを助ける」という記事の中で、「先週の木曜日、ロンドンのサヴィル・ロウにて、特別に書かれたいくつかの曲が通行人に聞かれた」ということがさりげなく紹介されただけだった(編註:アレン・クラインは当時のマネージャー)。1964年に撮影されたビートルズの最初の映画「ハード・デイズ・ナイト」では、ジョンが「子供たち、僕には考えがあるんだ!ここでショーをやろうじゃないか」と言って、映画のミュージカルの決まり文句を揶揄していた。5年後、彼らは最後の作品でまさにそれを行ったのである。このルーフトップ・コンサートはその後、様々な人たちに模倣されている。有名なものでは、1987年、U2がロサンゼルスのダウンタウンにある酒屋の屋根の上で「Where The Streets Have No Name」を演奏したことだろう(同時に交通も妨害して警察沙汰になった様子がビデオに残っている)。また、ザ・シンプソンズの制作者は、ホーマーによるアカペラグループ「ザ・ビー・シャープス」が「モーズ・タバーン」の屋根の上で歌っている様子を映し出し、ビートルズへ敬意を表した。この番組にカメオ出演したジョージは「やったことあるよ」と言っている。ビートルズの伝説的なルーフトップ・コンサートを全曲収録した「Get Back (The Rooftop Performance)」は、彼らが最高なバンドであることを裏付けている。最後にリンゴがニヤニヤしながら思い出していた言葉で締めよう。「ここ何年かで、最もライヴに近いものになった。曲を聴いて、エネルギーに耳を傾けてみてよ。僕はパートナーの一人にこう言ったんだよ、“悪くないバンドだね”って」。

ザ・ビートルズ:Get Back

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