クリエイティブの教科書 ポール・マッカートニーが語る作曲のきっかけ

Paul McCartney

「新しい」ものをつくらなければならない、しかし、「何から始めていいか分からない」という人はとても多いのではないでしょうか。アーティストのオースティン・クレオンは新しい物を生み出すには、まず「盗む」ことが重要だと言います。オースティン・クレオンが既存のものを「盗む」方法と、そのメリット、「盗む」ことに対する姿勢などについて語ります。

ビートルズはコピー・バンドから始まった
誰もスタイルや個性を持ったまま生まれてくるわけじゃない。自分が誰だかわかって生まれてくるわけじゃない。僕たちはまず、自分のヒーローのまねから始める。“コピー”して学んでいくわけだ。といっても、僕の言うコピーというのは、練習であって盗作じゃない。盗作ってのは、他人の作品を自分の作品にしてしまうことだ。コピーとは、いわばリバースエンジニアリングだ。整備士が車を分解して仕組みを調べるのと似ている。私たちは文字をなぞって書き方を覚えた。ミュージシャンは音スケール階をくり返して弾き方を覚えた。画家は名画を模写して描き方を覚えた。いいかい? ビートルズだって最初はコピー・バンドだったんだ。ポール・マッカートニーは言っている。「バディ・ホリー、リトル・リチャード、ジェリー・リー・ルイス、エルヴィスをコピーした。みんなでね」と。マッカートニーと、パートナーのジョン・レノンは史上最高の作曲家コンビとして歴史に名をとどろかせた。でも、マッカートニーが言うには、2人がオリジナル曲を書きはじめたのは「他のバンドには演奏できない曲を作るため」だった。

1人を真似れば“盗作”、100人を真似れば“オリジナル”
スペインの画家、サルバドール・ダリはこう言っている。「何もまねしたくないなんて言っている人間は、何も作れない」。まずは、コピーする相手を見つけることだ。見つかったら、次はコピーする作品だ。コピーする相手を見つけるのは簡単だ。君の大好きな人、君に刺激を与えてくれる人、君が憧れる人をコピーすればいい。一言でいうなら、君の“ヒーロー”だ。作曲家のニック・ロウは言っている。「まずは自分のヒーローの全作品を作りなおそう」と。といっても、1人のヒーローからまるまる盗んじゃいけない。ヒーロー全員から盗むんだ。作家のウィルソン・ミズナーは「1人の作家をコピーするのは盗作だが、何人もの作家をコピーするのは研究だ」と言っている。かつて、漫画家のゲイリー・パンターがこんなことを言ったのを覚えている。「君がたった1人の影響しか受けていなければ、君は第2の○○と呼ばれるだろう。だが、100人から盗んでしまえば、“君はオリジナルだ!”と言われるのだ」。コピーする作品を見つけるのはもう少し厄介だ。単にスタイルを盗んじゃいけない。スタイルの奥にある“考え方”を盗もう。君にとって大事なのは、ヒーローのように見えることじゃなくて、ヒーローのように見ることだ。ヒーローのひととなりやスタイルをコピーする理由はただ1つ。心の内側をのぞきこめるかもしれないからだ。大切なのは、その人の世界観を自分の一部にすること。作品の本質を理解せずに、上っ面だけをまねていたら、君の作品はせいぜい贋作にしかならない。

偉大なヒーローたちはものまねの限界を超えて、自分にたどり着く
しばらくしたら、ヒーローをまねるだけではなく、超えなきゃならないときが来るだろう。まねはコピーにすぎない。超えるためには、まねをもう1歩進めて、自分の一部にしなくちゃいけない。バスケットボールのスター選手、コービー・ブライアントは「新しい動きなんてない」と言っている。彼はかつて、コート上の動きはすべてヒーローたちの映像を観て盗んだものだと認めた。だが、ヒーローたちの動きを盗みはじめて、ブライアントは気づいた。そっくりそのまま盗むのはムリだと。体格は人それぞれ違うからだ。だから、彼は他人の動きに手を加えて、自分のものにしていった。コメディアンのコナン・オブライエンはこんな話をしている。コメディアンは自分のヒーローたちをまねて、超えようとするが、どうしても手が届かない。そうしてたどり着くのが“自分”というものなのだと。ジョニー・カーソンはジャック・ベニーになろうとしたが、結局はジョニー・カーソンになった。デイヴィッド・レターマンはジョニー・カーソンをコピーしようとしたが、結局はデイヴィッド・レターマンになった。コナン・オブライエンはデイヴィッド・レターマンになろうとしたが、結局はコナン・オブライエンになった。オブライエンの言葉を借りれば、「理想の人になろうとして失敗する。それが人間を形作り、ユニークな存在にする」のだ。やれやれ。

人間の偉大なる欠陥とは
人間には偉大な欠陥がある。完璧なコピーを作れないってことだ。ヒーローを完璧にはコピーできないからこそ、そこに僕たちは自分の居場所を見つける。そうやって、人間は成長していく。だから、ヒーローをコピーしよう。そして、自分に足りない部分を見つけよう。自分にしかない個性とは? その個性を何倍にも膨らませて、自分だけの作品へと変えよう。最後に言いたい。単にヒーローのものまねをするだけでは、報いたことにはならない。彼らの世界観に、君にしか加えられない何かを加え、自分だけのものに変える。そうしてこそ、相手に報いることができるんだ。

Thanks! 幻冬舎ゴールドオンライン